Monster's Ball

多くの人々に物語を解ってもらう為には、その人物の背景についてなどから、物事を順序立ててなるべく解りやすく徐々に説明していく必要がある。だから映画でももちろん、この人はこういう人物なので、この出来事に関してこんな風に感じ、そしてその結果今「怒っている」とか「泣いている」とかという風に描写されてゆくのだけれど、その説明をやり過ぎると、初めて観た映画なのに何回目かの様な気がしてくるから不思議。 

現実の世界では、その瞬間に自分がおかれている状況にしても、出会った人との話にしても、いつもぶっつけ本番で、一度として同じ状況は無いし、感情に関しても「あの時こう感じた」と言葉では言い表せない感情の方が多い。だから、その人物の過去にしても、これから何が起こるかにしても、それが独特であり、しかも説明されすぎず、というバランスとれていると現実感があって面白い。 

この映画も土台となる大きな話の構造の中に、そんなリアリティが言葉少なに描かれている。話の筋やそこでの感情を解らせようとすれば、だいたいはその時点で、表現が限られてしまい、元々の意味よりも少し違ってきてしまいがちだけど、そこをぐっと我慢してそうならない所がうまかった。

とにかく、劇中のいくつかの事件に関しても、人の感情の変化にしても、その都度くどい説明は無く、ただ起こり、過ぎて、言葉や表情、その人物の行動でこちらに判断させるという感じ。 少し前までは、名の知れた俳優の出るハリウッド映画というと、そのスターがスターであるが為の様で、ちょっと退屈なものが多かったけれど、最近は良い意味で「こんなのありか?」という、まるで、新しいセンスを持つ若い誰かが、ショービズのベテラン達を従えて自分のセンスにまかせて好き勝手に作った様な映画を見かける様になった気がする。

 音楽もそうだけれど、最近ではアンダーグラウンドシーンに何か新しいものがうまれると、その埋もれている時間がまだわずかうちに、商売人が発掘しメジャーとして広げるので、地獄とこの世がつながったような妙な世界になってきている。ということは、そこの角の映画館や、DVDレンタルのニューリリースの棚で、けっこう面白い作品と出会える可能性が高いということなので、もちろん大歓迎。 

それにしても、この日本向けタイトルとパッケージには脱力。しかもロマンスに分けられてるけど、良心はないのか。

[Monster's Ball] [地獄の門]

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