Dead Man's Shoes

 これは見てよかったなと満足させられるような作品には、ちょうどいい加減で「現実のような混沌さ」が混ぜ込まれている。もちろん、現実みたいに本当に混沌としていたらお話にならないけれど、とにかく、説明されないことがいくつかあるくらいの方が、現実感があって緊張してきていい。

 例えば、ある人物がハデな復讐劇を繰り広げるとしたら、その理由自体は単純なものでよしとして、とにかくその経過に何が起こるかによって、ぐっと引き締ってくる。そしてそれは、どちらかというと構造に関わるような大きな出来事ではなくて、小さな出来事を気の利いたタイミングで小出しされる方がいい。ということは、逆に言うと出来事や経緯について説明されていればいるほど、整理されていればいるほど、そして辻褄が合っていればいるほどシラける、ということになる。 ということで、ある程度不要と思われる登場人物は居た方がいいし、意味もない出来事があった方がいい。また、見ていて意味の分からないような人間の行動というのも、現実によくある緊張一つだ。とにかく、そんなことがちりばめられていると、予想を裏切ってくれるドキドキの映画になる。 

さて、そうしてみるとこの映画は復讐劇としての展開は鮮やかで、テーマと動機などの骨組みは至ってシンプル、さらに「お仕置きのバランス度」も絶妙。その辺がスマートに仕上がっているおかげで、いつも頭の中にある、そんなところでの掛け合いがない。そのすべてが当たり前に感じられるので、あえて「動機は十分か」「辻褄が合っていか」なんてことが全く気になってこない。 その上で、さあこの映画の楽しみは、となったときに、情緒があってかっこいいとか、現実感があって緊張させられる、というもう一段上の楽しみに引っ張り上げてもらえた。 

とにかく、風景も、個々の人物像も、出来事も、また場面から場面までの経緯、そして音楽まで、どれをとっても、さりげなくハマっていて格好がいい。またなんと言っても、普通の復讐劇なら、どうしても疑問が残ってしまう、復讐と正義という相反するものの両方が見事に貫かれているオチがいい。 こんな風に、身の回りに居る知らない人達の生活、そしてその中で起こった問題を垣間見るドキドキさ。いつも映画にはそんなことを求めているような気がする。 

ところで実をいうと、この映画の「イギリスっぽさ」というところを贔屓しているところがある。いい年をした不良中年達、パブの臭い、郊外の美しく開けた風景とそれにしてはどこか閉鎖された雰囲気、とか。それが美しいと感じるのはなぜだかわからないけれど、そんなところを舞台としている物語としては、それっぽすぎるところがまたたまらない。

[Dead Man's Shoes] [Dead Man's Shoes (Sound Track)]

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